孤独なる魔王 偽典
魔界。
そこは、異形の怪物――――魔族が蔓延る異世界。 かつて英雄を前に敗れ、倒れた者。 神々に挑戦し、反旗を翻さんとした者。 第二の生を享受する、彼らの安寧の地にして、戦場。 同時に、子を養う場でもある。 これは、起こり得た...
孤独なる魔王偽典≪イフ≫ 最終話 終曲
「跪け、雑種ども」
彼女の声に、反する者は誰一人として居らず。
彼女の名は、プエルラ・テネブリス。
たった一人の男を前に、敗北を喫し―――――復讐を果たした完全なる魔王である。
レクスを討ち、人間を滅ぼした、史上...
孤独なる魔王for bifore 禁忌の召喚者 (いい夫婦の日特別回)愛成≪アイジョウ≫
「ユンガよ! もうそろそろ番を考えるべきではないか?」城の窓から顔を出した、獅子の頭が言う。駄目ですよ。と言うと、わかり切った様子で頭を窓から下げてしょんぼり。その様子が思い浮かび、とても心痛むので、僕はいつもの言葉を口にする。「懲りずに...
孤独なる魔王 Beelzebub編 大地が枯れ 天は曇る(true&false)
「バアルゼブル! バアルゼブル!」
バアルゼブルは霞む目を、聞き馴染みある声に答え、無理矢理開ける。
「うぅ…………あ、アニー…………」
目の前で、心配そうにアナトはバアルゼブルの頭を撫で前髪を流す。
「何があった...
孤独なる魔王 Beelzebub編 豊穣の王は地上にて
魔界の中でも、最も謎めいた魔王の器の、悪魔属。
ふらりと食べ物を片手に現れては、目に映る者を小馬鹿にしたような笑みをたたえる、緑髪の悪魔の少年。
彼は、如何にして魔界へ堕ち、蠅の王となったのか。
これは、ある一族の末裔...
孤独なる魔王 Lucifer編 第三部 輝きの潰えた日
冥界にて、謀略を巡らせる”偽りの王”。
驕れるままに只、サタナエルは岩山の玉座で己に付き従う者達の軍を編成する。
その隣に居るのは、天界の至高にして唯一無二の偉大なる天使の長。
ルシファーである。
ルシファーは、...
孤独なる魔王 Lucifer編 第二部 堕ちる明星、嘆く空
不服そうに、互いから目を背ける階級の高い天使が二人。
天界の酒場で、互いに離れた席で酒を飲むルシファーとサタナエル。
ルシファーは、酒場のテーブル席でミカエルの隣に座り談笑しつつ酒を交わしていた。
「るしふぁーさまぁ、...
孤独なる魔王 Lucifer編 明星は高く在り
天界。
そこは、清き生命達の楽園。
聖なる場所。
天使たちが歌い、純白の、雲の様な美しい大地には花が咲き誇りそこに生きる生き物たちは天使たちの喜びの歌に旋律を奏でる。
「聞くのだ、我が愛すべき子供たちよ」
...
ー孤独なる魔王ー最終話ー交響ー
戦を終わらせ、プエルラは各種族から恐れられた。
だが、それと同時に希望の象徴となっていた。
敗北宣言の後の、反抗する本気の魔王を含む全員を前に傷一つつけずに力でねじ伏せたからである。
レクスを超える脅威として。
...
ー孤独なる魔王ー二一話ー終末ー
魔王達の進軍により、人類の楽園たる大国は、地獄へと変わっていく。
三大都市の内の、最後の一つ__ブロード王国最北端に位置する通称【魔術の園】が、大悪魔によって蹂躙されていた。
振る雪の、美しい町。
魔術の園に暮らす人々...
ー孤独なる魔王ー第二〇話ー魔王ー
魔界は、種族の境無くあらゆる魔族で賑わっていた。
悪魔属魔王城の城下町の大広間は、魔界の中でも特に魔族が集まっていた。
そこには__真ん中に巨大な魔法陣が展開されており注目を浴びていた。
その魔法陣を通し、魔王達は人...
ー孤独なる魔王第一九.五話ー笑顔ー
澄み渡る青空に交じる、草木と大地の匂い。周りを見渡せば、柵の先に居る牛や馬、家畜とそれの世話をする頭にバンダナを巻いた人達が見える。のどかで、どこか狭くもぬくもりに満ちた穏やかな農村。そんな村に、人一倍力自慢の子供が居た。赤髪で、乱暴者な...
ー孤独なる魔王第一九話ー転生ー
叢雲に閉ざされた空。
周囲から漂うは雨の湿った匂いに交じる仄かな血の匂い。
そこは、吸血鬼属の魔王が領域。
魔界の一端、ドラキュラ城である。
城の中の二階の部屋には、真っ赤なカーペットの上に置かれた豪華な造形の椅...
ー孤独なる魔王一八話ー再起ー
吸血鬼属は、人間への擬態に優れた一族である。
故に、かつての人間との戦争では財力などの水面下の戦力を奪うことによって魔王に貢献していた。
「愛おしくも哀しき同胞達よ__反撃の刻だ」
逢魔が時を示す空を、黒煙の如き軍勢で覆...
ー孤独なる魔王一七.五話ー勇者ー
名もなき村で育ったとは思われぬであろう天を穿つ程の得体。
雷を宿したが如く、鋭い眼。
鮮血を浴び続け染められたとさえ思わせる、深紅に燃える長き毛髪。
怪力無双にして、歴戦不敗。
彼の者に敵は無し。
魔族を組...
ー孤独なる魔王一七話ー再臨ー
それは、衝撃だった。
幼き少女の放った、情動だけを煮詰め、己の魔術と化して顕現させた、召喚魔法というにはあまりにも特異なもの。
その姿は、まさしく彼の者を彷彿とさせた。
屍の山を築き上げ、刃の雨を降り注がせ蹂躙していく...
ー孤独なる魔王第一六話ー再生ー
気が触れそうな程の精神への重圧と、全身を切り裂くような激痛に悶えながら、プエルラは意識を保つ。
周囲の集まっている魔族は、プエルラの様子に驚いているようだった。
「がああああああああ!!!!」
プエルラの体に刻まれたあ...
ー孤独なる魔王第15話ー再会ー
荒れ狂う魔界の海に浮かぶ、絶海の孤島。
そこは、見渡す限りが岩場で覆われており、ところどころに亀裂が入っている。
生き物が生息している様子もなく、ぽつりとその場に取り残されたようにプエルラは立ち尽くしていた。
奥、西へ...
ー孤独なる魔王第十四話ー捜索ー
魔界の海を泳ぎ、プエルラはわずかな力を振り絞り島へと向かった。
無我夢中で体を動かし、やがて目の前に浅瀬が現れ、小さな手が浮力から離れた瞬間_
プエルラは海の藻屑と共に、力なく波に晒され全身を脱力させた。
しばらく倒れ...
ー孤独なる魔王13.5話ー人間ー
活気と歓声に溢れた、王都にて男は人々の祝福を受ける。
人々は自国の英雄の帰還を、自身らの王のその勇姿を一目見ようと、男の側を囲うように集まっていく。
ここは、ブロード王国。
世界でも有数の、広大な領土を保有する大国家で...
ー孤独なる魔王第13話ー絶望ー
魔界の海。
そこはあらゆる水棲の魔族が生息し、陸の魔族とは全く別の文化、全く違う言語を使う種族の集う広大な海。
魚人にタコ型の魔族、マーメイド……そしてそれらの食物連鎖の頂点に君臨する巨大なイカの下半身を持ち、サメの様にとが...
ー孤独なる魔王第12話ー熾烈ー
何者をも通さぬ、狭く暗い洞窟に少女はたたずむ。
ピチョン、ピチョンと水の滴る海底洞窟にただ独り。
「はあ…っ!! 」
全身に力を籠め、魔力を回す。
目の前ですべてを奪っていった憎き男の顔を思い浮かべ、目の前に投影さ...
ー孤独なる魔王第11話ー覚醒ー
何も見えない暗闇に、少女は佇む。
その目に映るのは、虚無。
「ここは、どこ? 」
歩みを進めども、不思議に思う程に疲れずに、不気味な程に、無音で殺風景な風景が拡がっているだけだった。
「……お爺様? ……お父様? ...
ー孤独なる魔王第10話ー暗闇ー
魔界の空に響き渡る翼のはためく音。
それを鳴らすは、少年を乗せた魔獣の王。
向かうは魔界病院。
空中を羽ばたかせながら背に乗るユンガの方を向いた。
「………しかし、良いのか」
「……何が、です?」
「そ...
ー孤独なる魔王第09話ー傷痕ー
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目が覚めると、そこは真っ白な天井。あの後、自分の身に何が起こった?
そう、自分は確かに、あの人間との戦いの後、強制的にハエの大群に包まれそこから気を失ったのだ。
ハエの大群…思い当たる節は一...
ー孤独なる魔王第08話ー死別ー
男の怒号、館を眩く照らす閃光、大地を轟かす衝撃、 放たれる光線、弾を相殺させ生じる破裂音。
それらを起こしているのは一人の男と老人。
レクスは目の前に迫る塊を前にあらゆる手を付くし、勝負は今にも雌雄を決さんとしていた。
...
ー孤独なる魔王第07話ー戦場ー
「じいじ、本読んで~!」
無邪気に、ソファーの後ろにある赤い表紙の本を抜きそれを目の前に差し出す孫娘。
それは、お前にはまだ早い魔術書だよ。
儂わしはそっと本を孫の小さな手から元の場所へ戻し、代わりに昔読み古した簡単...
ー孤独なる魔王第06話ー破壊ー
勝負は、一瞬だった。獣の王であるが故に、牙と爪による攻撃しか知らぬ。それが、敗因だった。下腹部に貫通した、手刀。「………ウガアッ!?」腕を動かし、尻尾を動かし悶えその場で仕留めようと跑く。
しかし、眩い光の力を身体に放出させたレクス...
ー孤独なる魔王第05話ー激闘ー
あれから、どのくらいの時間が経ったろうか。
三匹の悪魔を相手に、短剣と魔術一つで迎え撃ち致命傷を与える男と、汗を流し、息を切らし、戦う悪魔達。
熾烈を極めた激闘は、悪魔達の余裕のない挙動と、男の汗を流しながら攻撃を受け流してい...
ー孤独なる魔王第04話ー地獄ー
「ダリャァ!!」
金属同士が擦れ、火花が散る音が、塔の中に響く。
しかしそこで行われているのは武器による戦闘では無く、獣同士の争いのような、素手による乱闘だった。
悪魔の爪を、男は鎧の籠手でいなし拳を顔面に当てる。
...
ー孤独なる魔王第三話ー蹂躙ー
「ここか、おぞましき怪物どもの巣窟は」2mはゆうに越える背丈の男は、魔界の空を裂き、ふわりと大地に足を降ろした。絢爛豪華な装飾がされていた痕跡の残る赤黒く汚れた鎧を、異形の怪物の骨で彩る深紅の髪をした、鋭い目付きの男。
彼の名は『レ...
ー孤独なる魔王第二話ー追憶ー
「お父さんっ、今日も伝統。頑張って」
「ああ、我輩も由緒正しきテネブリス家の当主だからな」
古びた城の中で、少女は五mはあろうかという大男に微笑みかける。
彼の名前はダグラス・テネブリス。魔界の歴史で二代目に魔王の座につ...
ー孤独なる魔王第一話ー序曲ー
RPGをベースとした世界観のろーぐのファンタジー小説の1話です! _彼女は、如何にして‘魔王‘と化したのか__