RPGの苦悩

 今日も世界を救う旅に出る。
 前の世界から持って来た、数々の武器たちを背負って。
 何度繰り返したかも解らない会話を、また、聞いて。
 僕は口に出したくても、出せない声を――――いや、ひょっとすると、最初から“会話”を諦めているのかもしれない。
 珍しいモンスターたちを引き連れながら、同じモンスターたちを狩る。
 記憶の引継ぎは、僕だけなのだろうか。
 
 武器たちは何度使っても壊れなくて、何度死んでも僕は蘇る。
 はいかいいえの二択すら、もう厭わしい。
 魔王の顔も、もう見ていない。

 隠された地下道に住む、魔神を何度も倒し、何度も珍しいアイテムを狙う。
 今日も、駄目だった。

 また、僕は世界を救う、旅に出る。

 仲間に、伝えたらどういうだろうか。
 お母さんに、お父さんに伝えたら、どう答えるだろうか。
 
 “もう、世界は救ったよ”。
 “誰よりも、強くなったよ”。
 
 なんて、伝えられたらどんなに良かったろう。
 僕の声は、いつも、二択しかできない。

 広かった世界も、今じゃ凄く狭い――――。

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