鬱蒼と生い茂る森林。
獣道と形容すべき、荒々しく風に削られた、その地面に一行は座っていた。
「意外と、うまくまけたな」
棕は、たった一つの目を隣にいるアムドゥシアスに向ける。
対してアムドゥシアスは、両手を地面に着け、目の前のキマイラを心配そうに見つめていた。
「ですが、キマイラ様が大変弱っています」
アムドゥシアスが言うと――ユンガがキマイラの頭を擦りながら、アムドゥシアスに声をかける。
「アムドゥシアス、まず安全を確保しなければならない。確かお前の能力は植物の生成だったか。僕らの姿が隠れて、かつ違和感のない大きさの茂みを作ってくれ」
ユンガの要望に頷きで返すと、体勢をそのままにアムドゥシアスは両手に強く念じ始めた。
(この能力は、ワタクシのみに備わった能力ではありますが……我々の姿があらゆる方面から隠れられる大きさとなると………)
アムドゥシアスは周囲を見渡すと、唾を飲み干し、周囲に茂みを発生させる。
範囲にして、半径約三十m、茂みと共に生成させた樹木の高さは約三mにもわたるものだった。
「これで、いかがでしょうかユンガ様」
額に汗を滴らせ、アムドゥシアスが訊ねるとユンガは会釈した。
「ありがとう、でも問題は――」
「あんたの奥さん、だよな」
木に寄りかかり、遠くから見ていたグリードはユンガに話しかける。
ユンガはそれを聞いて、顔をしかめた。
その瞳は、周りの仲間たちに、今までにない儚げな少年の面影を映していた。
快は、一連の会話を聞き、目にしてキマイラの元へ恐る恐る立ち寄る。
唇を嚙み締め、義足を金属の音に震わせて。
(もしかして、グリードを救ったあの剣の力なら……!)
快は、自分の手に握られた剣を見る。
太陽を思わせる刻印の入った、剣。
その剣を、横たわるキマイラに剣先を向けると、神々しい光がキマイラに放たれていった。
「快! 何をするつもりだっ!! 眩しっ!」
快以外の全員は剣から放たれる光を前に目を塞いでいると、光は一瞬で剣の中へと戻るように吸い込まれる。
光を浴びたキマイラの腹は、段々と息が整っていったことを報せた。
やがて、キマイラの左右に、違う色を宿した瞳は開眼していく。
ユンガは、それを見て快を振り払い、第一声を上げる前にキマイラに抱き着いた。
「あだっ! ユンガさ………」
「キマイラ!!」
キマイラは、反射的に人型の姿を取り、臨戦態勢に入ろうとする。
が、それはすぐに解かれた。
懐かしく、求めていた温もりと匂いが――自らの身を包んでいる事に気付いて。
「………ユンガ、ユンガ…………?」
お互いの顔を、確かめ合うように顔を擦る。
と、同時に互いの頬には、雫が零れだしていく。
「……全く、お前は泣き虫よな」
「キマイラが言えたことじゃないだろ、今は」
会話を聞いていた、快とアムドゥシアスは無言で微笑む。
二体の再開を、祝福するかのように。
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