第三十話 森の中のwedding

鬱蒼と生い茂る森林。

獣道と形容すべき、荒々しく風に削られた、その地面に一行は座っていた。

「意外と、うまくまけたな」

 棕は、たった一つの目を隣にいるアムドゥシアスに向ける。

対してアムドゥシアスは、両手を地面に着け、目の前のキマイラを心配そうに見つめていた。

「ですが、キマイラ様が大変弱っています」

 アムドゥシアスが言うと――ユンガがキマイラの頭を擦りながら、アムドゥシアスに声をかける。

「アムドゥシアス、まず安全を確保しなければならない。確かお前の能力は植物の生成だったか。僕らの姿が隠れて、かつ違和感のない大きさの茂みを作ってくれ」

ユンガの要望に頷きで返すと、体勢をそのままにアムドゥシアスは両手に強く念じ始めた。

(この能力は、ワタクシのみに備わった能力ではありますが……我々の姿があらゆる方面から隠れられる大きさとなると………)

 アムドゥシアスは周囲を見渡すと、唾を飲み干し、周囲に茂みを発生させる。

範囲にして、半径約三十m、茂みと共に生成させた樹木の高さは約三mにもわたるものだった。

「これで、いかがでしょうかユンガ様」

額に汗を滴らせ、アムドゥシアスが訊ねるとユンガは会釈した。

「ありがとう、でも問題は――」

あんたの奥さんキマイラ、だよな」

 木に寄りかかり、遠くから見ていたグリードはユンガに話しかける。

ユンガはそれを聞いて、顔をしかめた。

その瞳は、周りの仲間たちに、今までにない儚げな少年の面影を映していた。

 快は、一連の会話を聞き、目にしてキマイラの元へ恐る恐る立ち寄る。

唇を嚙み締め、義足を金属の音に震わせて。

(もしかして、グリードを救ったあの剣の力なら……!)

 快は、自分の手に握られた剣を見る。

太陽を思わせる刻印の入った、剣。

その剣を、横たわるキマイラに剣先を向けると、神々しい光がキマイラに放たれていった。

「快! 何をするつもりだっ!! 眩しっ!」

 快以外の全員は剣から放たれる光を前に目を塞いでいると、光は一瞬で剣の中へと戻るように吸い込まれる。

光を浴びたキマイラの腹は、段々と息が整っていったことを報せた。

やがて、キマイラの左右に、違う色を宿した瞳は開眼していく。

 ユンガは、それを見て快を振り払い、第一声を上げる前にキマイラに抱き着いた。

「あだっ! ユンガさ………」

「キマイラ!!」

 キマイラは、反射的に人型の姿を取り、臨戦態勢に入ろうとする。

が、それはすぐに解かれた。

懐かしく、求めていた温もりと匂いが――自らの身を包んでいる事に気付いて。

「………ユンガ、ユンガ…………?」

 お互いの顔を、確かめ合うように顔を擦る。

と、同時に互いの頬には、雫が零れだしていく。

「……全く、お前は泣き虫よな」

「キマイラが言えたことじゃないだろ、今は」

会話を聞いていた、快とアムドゥシアスは無言で微笑む。

二体の再開を、祝福するかのように。

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