禁忌の召喚者第六話 後編 will not move anymore

 瞬間の衝撃。

刹那の激痛。

 それは、快の初めて受けた、不意打ちによる傷。

人差し指ごと指輪を落とし、快は唖然とする。

「え…………?」

快が左手を見ると、人差し指の在った形跡の残る断面が見えた。

「ぎゃあああああっ!!」

 痛みに悶え、右手で血の滴る左手を抑える。

しかし、その叫びも、流れる血液も止めらなかった。

「痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い熱い熱い熱い熱い熱い熱い!!」

その場に跪き、地面に屈んで痛みを堪えようとする。

だが、それは無意味に終わる。

痛みはやがて熱として断面から伝わり、外へ出ていく血を抑え込もうとすればするほどに熱はどんどんと、鮮明に伝えていく。

痛覚を訴えども、熱に喘ごうとも、左指が元の形状をなす事は決してなかった。

「なんだ、ただの雑魚じゃあん。警戒して損した」

 快の正面から、声と共に翼のはためく音がする。

そして、翼のはためく音は快の頭上へ近づいていった。

快は、その音に反応する事も無く悶え続ける。

「きゃはっ、可哀そうだね。ちょっとおいで」

快の体は、空中へ浮かび一瞬にして上空へと何かによって連れ去られていった。

「うがっ?! なっ、なんだ!?」

 快が頭上を確認しようとすると体を揺さぶられ、視点が定まらなかった。

快は下を見下した。

すると既に地面から遥か離れており、行き交う車は豆粒ほどの大きさに見えていた。

周囲は高層ビルの屋上やアドバルーンたちが快を迎えている。

「いい景色でしょ? …………ここから落ちたらどうなっちゃうんだろうね?」

 和やかに、それは語った。

「ぐっちゃぐちゃになるのかな? あでも変なところがクッションになって助かって、脊髄にダメージ喰らって、二度と動いたり喋ったりできなくなるかも? キャハハッ」

邪悪さと、無邪気さを内包したその言葉に、快はこの場から落とされ肉塊となった自身の姿を思い浮かべる。

そして、”何か”は目の前のビルの屋上に快を下ろした。

すると、これまで快の体を持ち上げていた何かは快の真正面に立つ。

「……お前、まさかバエルの仲間? 何故こんなことを……………!」

 快は目の前に現れた者を睨む。

その者の姿は、豹の耳を生やした、妖艶で美しく、扇情的な衣装を身にまとった人間の姿をとっていた。

「あたしっち、シトリー。あそこで殺しても良かったのだけど…………あんな奴がバックにいちゃ、流石に何もできないと思ってね」

「あんな奴…………まさか、ホテルに居たソロムか!」

 快がそう言い放つと、シトリーは指を鳴らした。

「ソロムって言うのね、OK。銀髪の怪物って呼び辛いもんね」

シトリーは、笑みを浮かべて快に歩み寄る。

「ねぇ、君。君さえよければ…………けーやく、しない?」

「契約………? なんのだ! 人間を殺すのか?!」

 快は、左手を抑えながら怒鳴る。

シトリーはそれに動じない様子で、尻尾で快の頬を撫でた。

「パパじゃないんだから、あたしっちはフェアにやりたいの。等価交換ってやつ」

 シトリーはそう言って、快の前でしゃがむ。

「………あたしっち、割と悪魔の中だと偉いんだよね。それと、催眠魔術、催淫魔術が得意でさ」

「だからなんだ、僕に何を求めてる」

「君の欲しいモノを、あたしっちがあげる」

シトリーの瞳が妖しく輝く。

瞳が輝くと、快は反射的に顔を逸らした。

「ねぇベイビー、秘密を明かたい人っている?」

「秘密……?」

「そう、任意契約してくれればその人の秘密をぜーんぶ明かしちゃうよ。それだけじゃなくて、君に好きな人ができたら……その人を君だけのものにできる。どぉ?」

「そ・れ・と・も………………あたしっちを好きにしたい?」

シトリーは、快に吐息を吹きかけながら快の腰に手を回し、ゆっくりと押し倒した。

「うあっ…………誰がお前なんかと!」

「じゃあ……死ぬか、体に直接訊くの、どっちがいい?」

 快が再び鋭く睨むと、シトリーは爪先で快の腹をなぞりだす。

「あたしっちはね、痛めつけるならともかく、すぐ殺しちゃうのは嫌いなんだ。だからここは殺された事にして………契約、しない?」

「目的は、なんだ」

「目的? 簡単、味方を増やして、銀髪の怪物を倒すの。君としても、それが望みだと聞いてるけどどうだろう?」

快は、視線を逸らしながら思考を巡らせる。

(………待て、契約したところでどのみちバエルにばれれば、恐らくは殺される。なら………)

快はポケットからカードを取り出した。

「ねぇ、どうする? 早くしなよ」

「一つ、訊かなくちゃいけない事がある」

重々しく、快は言う。

「なぁに?」

「お前は、僕との契約で、仮に怪物を倒した後僕をどうするつもりだ。それか、僕が死んだあと」

快が問うと、シトリーは笑顔で答えた―――。

「死んだあとは、また新しい契約者を作る。でもって……………ま、パパとか出来損ないの悪魔にやられたらやられたでどうでもいいかな」

快は、それを聞き迷わず―――印章封印札を掲げ念じた。

「ユンガ・テネブリス!!」

 叫ぶと、シトリーは爪を振り上げようとする。

しかし、目の前に現れた魔法陣から発せられる稲妻によってそれは妨げられた。

稲妻に手を焦がされ、後方へと飛び立つシトリー。

そして、魔法陣の中心から巨大な三角形が飛び出す。

「俺を呼んだかい、任せて。一撃で葬ってやるとも」

やがて、三角形から、マントをなびかせユンガが姿を現した。

その姿を見たシトリーは、驚いた様子で目を丸くする。

「これはこれは、誰かと思えばブラコンとケモナーの性癖持ち。もとい金魚の糞じゃないの!」

 ユンガを嗤うシトリーに対し、ユンガは淡々と語る。

「? よくわからない地上語を話しているあたり地上を満喫してるようでなによりだよ、グランドデューク・シトリー」

会話を交える二体。

「? ユンガさん、知ってるんですか?」

ユンガは快へ振り向き答えた。

「うん、グランドデューク同士会う事も多くてね。性格は良いとは言い難いが」

「キャハハッ、あたしっちの生きがいを奪うあんたみたいな権力者が一番せーかく悪いと思うけどね!」

 ユンガは、一瞬にしてシトリーと距離を詰める。

「僕は姉様の方針に従い、人類への悪影響を及ぼす契約を施そうとする種族に、契約魔術を禁じただけ。その代わり、かける税を安くしているのだろう」

ユンガが語ると、シトリーは笑って答えた。

「キャハ! 少数派の考えを反映していると謳っておきながら、結局は一部の契約魔術を使う種族、つまり少数を排他してるじゃない」

「君の姉さんも、大体どうかと思うよ? 魔王という身分の癖に七〇年は失踪して、弟に席を守れ? 責任感じてるくせにやってること無責任そのもの。そんな事やっていいと思ってんの?」

 シトリーは、畳みかける様に発言する。

 ユンガは、ただそれを黙って聞いていた。

「そもそも、病気持ちなら魔王になんかなるなっつーの。それこそ、あたしっちの知り合いの魔王の器の方が相応しいと思うんだけど! しかも、何? あの魔界に建てた塔。あれで異種族の壁がなくなるって?」

「考え方も、やり方も都合良すぎなん―――」

シトリーが次の言葉を発そうとした瞬間、シトリーの顔は、ユンガの手に握られていた。

「四分。四分だ、貴様の聞くに堪えない侮辱に耐えたのは」

ユンガの穏やかな声色は、低く、不穏な声色へと変わっている。

遠くで見ていた快は、その豹変ぶりに思わずたじろいだ。

「俺への侮辱なら何回でも聞いてやろう。改めようとも。だが、俺の姉上への侮辱は―――万死に値する」

 シトリーは、掴まれた顔を持ち上げられながらもがく。

が、抵抗にすらなっていなかった。

「売女もどきごときの戯言と聞き流すべきなのだろうが、貴様は俺の怒りに触れた。もはや慈悲は無い」

「ま、待って、話し合おうって、ごめんね? その………なんでもしてあげるから!」

焦りを見せるシトリーに、ユンガは顔を近づけ言う。

「なんでも? ほほぉ、じゃあ死を以て謝罪を示せ、女豹もどきの豚畜生」

シトリーは、指の隙間からユンガの顔を覗く。

その顔から、ユンガがこの世のものとは思えぬほどに怒りに狂い、歪んでいるのが分かった。

「ひっ………っ、舐めるな!!」

シトリーは爪でユンガの目を引っ掻いた。

両目に当たったその一撃に、思わずユンガは怯みシトリーの顔を握っていた手を緩める。

「しめた! そらっ!」

ユンガの腹を蹴り、翼を広げシトリーは飛び立った。

「ユンガ、逃げられる!」

 快が言うと、ユンガは血の流れる目を無理矢理開き、眼にシトリーを捕らえる。

「生きて、逃げられると思うなよ」

ユンガは両腕に紫電の稲妻を纏わせ、屋上のコンクリートを踏み潰し、飛び上がった。

「ええい、しつっこい!」

シトリーが振り返ると、ユンガは既にシトリーの足をつかみ取っていた。

(速い………このあたしっちを、こんな短時間で!?)

「猫は、高所から飛び降りても平気と聞く。……………お前はどうかな」

ユンガは足を掴んだ手を振り下ろす。

すると勢いのままに、シトリーの体は一気に急降下した。

「うわあああっ!」

体勢を崩し、シトリーは落下していく。

空中で暴れるシトリーに、ユンガは浮遊魔術を使い、体を一回転させ、シトリーにの懐へと突撃していった。

刹那、ユンガの爪がシトリーの腹を貫く。

「がっ…………このクソガキ……………!」

抵抗を続けるシトリーに、ユンガは深く息をつき―――唱え始める。

「”――我が歩み、普遍でなく。我が脳髄、不変にて。我が前に驕る者、頭を垂れん」

腹を貫く爪は、徐々に纏っていた稲妻の形を変えていった。

「しかして我は王でなく、されど我が血は高貴なり。故に驕れる者、我が血を冒涜せんとする者は我が剣で以て、汝の体に我が王の言の葉を刻もう”」

爪がようやく腹から抜けた時、シトリーは眼前の光景に、絶望の表情を浮かべた。

跪け、頭が高いぞ雑種どもチ・リ・タ・マ・エ

詠唱を終えると、ユンガの周囲には、漆黒の十字の壁が何万と一列に並び、荘厳な雰囲気を醸し出していた。

 その雰囲気、空気感からシトリーは直感的に悟る。

自らの、死を。

「あたしっち、まだ死ぬわけにはいかないんでねっ!!」

シトリーは対抗し、口から炎を吐き出す。

 ユンガがそれを見て手を伸ばし、振り下ろすと無数の衝撃波が十字の壁から放たれていった。

衝撃波は、全てシトリーに降り注いでいき、命中したシトリーの翼は一瞬にして細切れとなる。

「さぁ、魔界で懺悔しろ」

ユンガが容赦なく言い放ち、握りつぶすような仕草を見せると、衝撃波はシトリーの周囲を取り囲み、集約されていく。

何も言い返す事すら許さず、衝撃波は粉微塵にシトリーの体を切り裂いていった。

「ぐえああああああ!!!」

「さて、意識があるのかは知らないが、紹介させてもらおう。俺のこの魔術は特殊でな。姉上特有の召喚魔術を真似たつもりが、俺を始めとする俺の一族の苦痛、怨念を衝撃波として放つものらしい」

「姉上が、我が血族の栄華を象徴する魔術なのに、まるで、俺がその負の遺産を受け継ぐかのようなものになってしまった」

 苦痛に悶えるシトリーに、ユンガは穏やかに語り続ける。

「姉上を超える、それどころか反対の魔術、真逆の成長をしてしまった。肉体では姉上を凌いだが、生み出して覚えた魔術は下位互換。運命の嫌がらせを受けているとしか思えない」

「シトリー、貴様にこの気持ちは解るはずもあるまい。敬愛しながらも、この心底に巣食うヘドロの様な感情が」

「俺は、俺だ。だが、実際に見られ評価されるのは姉上。しかたのない、俺にしかできない役回りという事は解っているが………な」

ユンガは、目を瞑る。

しばらくして、目を開くと同時にユンガは笑む。

「………この魔術を使うと、いつもこれだ。いけないいけない、じゃあね」

落下するシトリーを見下ろし、ユンガは片腕を上げ、十字の壁を消していった。

ユンガが元居たビルの屋上へ行くと、快は屋上のフェンス越しに手を振る。

「ありがとうございます! でもすみません、ビルから下ろしてください!」

「お安い御用」

ユンガは快の体を抱きかかえる

「あの例のホテルまで!」

「解った」

そう言ってユンガは元居たホテルへと向かっていった。

 抱きかかえられながら快は、ユンガに問う。

「そういえば、あの壁の魔術って………?」

「ん? あぁ、僕のオリジナルでね。といっても、姉様の真似だけど」

快は笑って返した。

「ぷっ、一人称やっぱりふわふわじゃないですか」

快が笑うと、ユンガが抱えた腕を揺さぶった。

「突っ込まないでくれるかな…………まったく」

ビルとビルの間をすり抜け、ゆっくりとホテルの前まで、快とユンガは降りていく。

そして、目的地に着くと快はユンガに腕から降ろされた。

「ありがとうございました、ユンガさん」

 ユンガは礼を聞き届けると、足元に魔法陣を展開した。

「あぁ、また何かあったら呼ぶと良い。すぐ召喚に応じるから」

下に展開された魔法陣は上へと上って行き、ユンガの体はそれに従って消えていく。

やがて、目の前からユンガは完全に消えていった。

快はそれを確認すると、周囲を見渡した。

(………自分の指を探して拾うのも気が引けるけれど…………どこへ落ちてたっけ)

 快は、地面を見渡す。

すると、生乾きの血痕が目についた。

(そうだ、これを辿って行こう)

点在する血痕を頼りに、人差し指を探していく。

そして、とうとう快は指輪のはめ込まれた人差し指を見つけた。

快はそれを拾い上げ、指輪だけを取り出し右手に付け替える。

(まだ左手が痛い…………………)

快は左手をポケットに突っ込み、人差し指もそこへ入れた。

 ほっとしたのも束の間、後方から突風が巻き起こった。

「なんだ!?」

後ろを振り返ると、そこには退治したはずの悪魔――バエルが居た。

「見つけたぞ……………見つけたぞ………見つけた見つけた見つけた見つけたァ!!!」

 バエルは右手から糸を繰り出す。

 快はその瞬間、指輪に宝石を指輪に念じた。

鎧とサーベルに武装し、サーベルを振るうと糸は簡単に切れていった。

「ええい!! あの豹、指輪を封じろと言ったはずではないか!! もうどうでも良いことだ、貴様をここで潰す!!」

バエルが飛び掛かると、快はサーベルを斜めに構える。

バエルの右手の爪とサーベルは擦れ、火花を散らした。

防御に成功した一瞬、衝撃によって快の体は後ずさる。

「うぐっ、身体能力は強化されているはずなのにこれ……………?!」

「小童が! 私は魔王の器! そこまで耐える事を冥土の自慢にでもするが良い!! 私はもう容赦せん!」

 バエルは、蛙の様に全身を使い、高速で再び接近した。

 それに対し、快はサーベルを構える。

「ぐっ、だからなんだ! たあっ!」

正面にバエルの顔が近づいた時、快はサーベルを振った。

 それを読んでか、バエルは右腕をとっさに構える。

すると、サーベルは右腕の硬さによって跳ね返り、手元から浮いていく。

(まずい!)

 サーベルを掴もうとした瞬間、バエルに体を切り裂かれた。

鎧ごと、斬撃を直撃し体から噴き出す血は、快の視覚からも打撃を与えていった。

「うがあああっ!!」

痛みを訴える隙も無く、一秒ほど怯んでいるとバエルは反転し、切り裂いた箇所を蹴った。

斬撃に加え、与えられる攻撃は快の肋骨を山道に散らばる小枝の様に砕き折る。

蹴られた衝撃で、快は吹き飛び、向こう側に止められた自動車の窓に頭から突っ込んでいった。

耳をつんざくクラクションに、快は奇跡的に気絶を逃れる。

快は、血にまみれた体を無理矢理動かし車のドアを蹴り飛ばした。

「はぁ、はぁ……痛いっ………」

 バエルは飛ばされた車のドアを右腕で切り裂き、再び突進する。

 快は突進のタイミングに合わせ、両腕に風を纏わせた。

「喰らえ!」

両腕を勢いよく交差させると、真空波が起こりバエルの体を斬っていく。

「ぐっ!! 小癪な真似を!!」

 バエルは糸をビルの上へ飛ばし、移動する。

「逃がす………か!!」

快は車の天井を殴り、穴を開けた。

すると、ビルの壁にサーベルが突き刺さっているのが見えた。

快は急いで飛び上がり、サーベルを抜く。

抜いた瞬間、快の体に頭上から糸が下り、巻き付いていった。

「くっ!」

「知らなかったか、蜘蛛は罠の側から離れんとな!!」

 糸を引っ張り上げ、バエルは右手を開く。

 快は、体がバエルの右手に吸い寄せられていく瞬間、腹部にサーベルを突き刺した。

「ぐああっ…………! おのれ小僧ォ!!」

快は、サーベルを突き刺したまま、全力でサーベルに念じる。

すると、サーベルは真空波を漂わせ、内側からバエルの体を裂いた。

「喰らえ……これが、お前の憎み、嫌悪した人間の爆発力だ!」

サーベルを上へ上へと押し上げていくと、鎧の一部分からどんどんとひび割れていった。

(まさか、ここでタイムリミットか……………?! 過ぎたらどうなるかわからない、ここで倒し切らないと………!)

はらわたを切り裂き、骨を断ち、首元までサーベルが切り込んでいった瞬間、バエルは快の体を全力で蹴り飛ばした。

脇腹に直撃した一撃は、快の体をビルの壁をめり込ませるほどに勢いよく飛ばす。

全身に伝わる、呼吸が一瞬途絶える程の打撃に快はただ身を任せ、するするとガレキと共に崩れていった。

「くはっ…………うぐっ…………げほっ」

咳と共に、血を吐き出すと鎧とサーベルは指輪の形へと戻った。

鎧とサーベルが無くなると、快の体は一気に動きが鈍重になる。

(ぐっ………重い…………動かなきゃいけないのに、動けない………これがタイムリミットの代償か………)

快は、朦朧とする意識の中、必死に腕を動かし次の宝石を付け、念じた――――。

「無駄だ、何があろうと私と貴様の差は埋まらん、その体が治るのにいくらかかる事だろうなぁ?」

 バエルが、右腕を振り下ろすと―――――。

漆黒よりも黒いオーラを身にまとった”怪物”が、右腕を潰した。

~新登場キャラ紹介~

シトリー 物理力 ? 肉体 ? 知識 ? 知恵 ? 瞬発力 ? 魔力 ? 再生力 ? 総合脅威度 ?

爵位 偉大なる卿グランドデューク

階級 無し

種族 悪魔属

身長 体重(人間擬態時) 身長一七八cm 体重 五九kg 

正体 ソロモン七二柱が一二番に数えられる魔神。

召喚者の望む、情欲や愛に関連した願いを契約によって叶える事ができる、契約魔術、催眠魔術、催淫魔術に優れた悪魔である。

そういった人間の感情に触れることが多い悪魔であるため、人間に理解が深いと思われがちだが召喚者側は、常に危険と隣り合わせとなる事を承知で召喚、契約を結ぶこととなる。

これは、シトリー自身の気まぐれによるもので、彼(彼女?)の手によって堕落の道を歩ませられるか、拷問の末に殺される場合が多々あるからである。

因みに、バエルとは親子関係にあるが、仲は互いに良好とは言い難い。

魔族は、自身の性自認によって人間を模した姿になる際の体を決めるが、シトリーはあえて決めておらず、美しい姿と思う姿を取っている。

気まぐれかつ、狡猾。扇情的にして耽美。

正に、原初の悪魔属らしい性格をしているといえる悪魔である。

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