禁忌の召喚者 第八.五話ー黒幕ー

 「魔界へ帰れ、最終警告だ」

夕暮れの斜陽に隠れる影の様に、ひれ伏す名も無き悪魔属へ爪を向ける者が居た。

彼の名は、ユンガ・テネブリス。

攫われた妻を探す道中、出会った暴徒と化した同胞の説得を試みている最中であった。

「ぎぎっ………仕方ありませんね」

「頼むよ、俺はできる限り傷つけたくないんだ」

ユンガが眉を八の字にして、ため息交じりに笑みを浮かべると悪魔属は魔法陣を足元へ作り、その中へと沈んでいった。

(さて、”銀髪の怪物”はどこなのやら…………そういえば、近くでビルが倒壊する程の大事故があったらしいが)

ユンガは後ろを振り返り、都市部を見つめる。

(あそこの近くだったか? 一度見に行こう)

歩道を蹴り、道路を走る自動車を置き去りにせんばかりの速度で駆け抜けていく。

その姿を、目に捉えられる者は誰も居なかった。

コンクリートジャングルを飛び抜けていくと、ユンガの目の前の風景は一気に変わった。

「なっ………………!?」

眼前に広がるのは、荒廃した都市群。

先程まで居た街並みとは、打って変わるどころか、全くの異空間と言っていい程の有様。

「ガアアアアアア!!!!!」

「くっ! 寄るな寄るな寄るなぁぁ!!」

ユンガがビルの壁へ爪を引っ掛け、下を見下ろすと、そこには異様な者達が居た。

ユンガの知る生物から、大きくかけ離れた黒い塊と、その塊から逃げる様に右腕を抑え、移動していく悪魔属と思しき男の戦い。

 ユンガは、その悪魔属を知っていた。

(あれは…………まさかバエル?! あの悪食暴君まで居たのか……………?)

 ユンガはビルを駆け上り、屋上からバエルを観察する。

「ええい! まだ追いかける……………ぐうあああ!!」

黒い塊はビルへ身を隠そうとするバエルへ突進するや否や、バエルの上半身を吹き飛ばす。

(なんなんだ、あの黒い塊……………戦闘能力だけで言えば、バエルは上位の筈…………)

 バエルは、数ある魔王の器達の中でも畏れられる程の高位の悪魔属だった。

その脅威度は、魔力、物理力共にその気にさえなれば地上界よりもはるかに広大な魔界の半分を一晩で滅ぼしかねない程のもの。

地上へ上がれば、地上界全土を滅ぼしてしまうであろう実力の持ち主だった。

(あのバエルが、押されてる………? それにバエルは人間を嫌悪してたはず。そんなバエルなら、もっと派手な行動をしていてもおかしくないのに………)

 「おのれ小僧!! よもやこの私が! こんの! 偉大なるバエルが! 貴様に本気を出さねばならんとはぁぁぁ!!」

バエルは瞬時に全身に魔力を込め、上半身を再生させた。

「グルルルルォォ!!」

対する黒い塊は、バエルに雄たけびを上げ威嚇している様子だった。

バエルは、左腕の爪と背中の八本の脚を同時に展開し、牙を剥きだす。

「喜べ、魔界の誰しもが見た事の無いこの私の本気が見られるのだからな!!」

(バエルの本気!? 何が起こっているかはわからないが、止めなくては!)

ユンガはビルのフェンスを飛び越え、降りていくと、バエルの脚と爪から光線が放たれていった。

「―――滅人破却ノ牙!!」

ユンガが地に降り立つ前に、それは発動する。

光線が一度に集まるその様は、まさしく蜘蛛の巣の如く。

光線は一線残らず、黒い塊へと命中していった。

黒い塊は、光線をその身一つで受け止め、体と思しき部位からは火花が散っていた。

「これで消え去れェ!! 私が倒せぬものなど、魔界以外に在ってはならんのだァ!!」

黒い塊が光線の威力に、いよいよ後ずさって行くとバエルの口許は歪む。

「そうだろうそうだろう! さぞ激痛だろう! 小僧風情が受けていい筈の無いものだからな………そのまま我が汚点ごと消え去れ!!」

全身から汗を流しながらバエルがそう言うと。背中から飛び出し、光線を放つ脚は、より太く脈動していった。

黒い塊が、光線の中へと姿を消すとバエルは力なく脚を背中へ格納していく。

「……………ふん、消えたか。そうだとも、このバエルがその気になれば消せぬ物などありはせぬのだ」

言い聞かせるように、念じるように、バエルは呟いた。

遠くからユンガが周囲を見渡すと、確かにバエルの目の前にあたる箇所からは黒い塊は消えていた。

(なんだったんだ? 気は進まないが、バエルに訊いてみるか)

ゆっくりとバエルの方へ歩み寄ろうとした直後――。

バエルは、上から降ってきた”何か”に潰された。

(?!)

 ユンガが思わず後ろへ下がると、その何かの正体がすぐに分かった。

 先ほどまでの黒い塊だった。

黒い塊は、原形を歪め、やっとの様子で呼吸するバエルを何度も殴っている。

「ガアアアアア!」

殴る度に、大地は割れ、地響きが鳴り響く。

(なんなんだ……………………あれは)

ユンガはよく目を凝らし、黒い塊を覗く。

 その正体を視認した瞬間、ユンガの体はこわばり、全身の血の気が引いてく感覚を覚えた。

ユンガは、理性や感情、思考ではなく本能で悟る。

”絶対に、近づいてはならない”と。

 漆黒よりも深く、暗く、黒い鎧に身を包み、獣のような爪を持つ”それ”。

その姿と、野獣の様に暴れ狂う振る舞いは、黒騎士や暗黒騎士、狂戦士と形容することさえ拒ませる。

 混沌魔鎧。

そんな名前が、ユンガの脳内に叩きこまれる様に巣食っていた。

 何度も、何度も、拳を叩きこむ鎧。

鎧の前の相手は、既に肉塊と化しているにも関わらず。

(なんて奴だ………もう無抵抗だろうに)

ユンガは足を動かそうとするが、黒い塊の居る、三m先へはピクリとも動かせなかった。

「ユルサヌ………コロシテヤル…………コロシテヤル…………!」

うわ言の様に言い、黒い鎧を呪うバエル。

「もう良いだろう!! 止せ! 止せっていってるだろう!」

ユンガの口から声が飛び出すと、鎧はユンガへ視線を向けた。

「グルルル…………」

曲がった背をゆらゆらと揺らしながら、兜に隠された瞳を輝かせ、鎧は唸る。

瞬間、ユンガは構えた。

「バエル! 貴君に何があったかは存じないが退避するんだ! ここは俺に任せて!」

肉塊となったバエルは掠れた声で答える。

「誰が……………………貴様の提案など受け入れるか…………私はダー―――」

バエルが台詞を言おうとすると、鎧は片手から弾丸を放った。

放たれた弾丸に、バエルの体は一瞬にして――塵も残さず消滅していった。

「……………なんて奴だ、こんなでたらめな強さ見た事も聞いたことも無いぞ………………」

 刹那、電光がユンガの脳内に走る。

「まさか、妻を攫ったのも、この世界の境界も破壊したのもお前か!! 答えろ!」

 ユンガが全身に魔力を籠めると、鎧はただ亡霊の様に、ユンガを見つめたまま脱力した様子で立ち尽くしていた。

「…………イタイ、イタイ…………」

(話した?! でも先程までと様子がまるで違うぞ…………?)

ユンガが接近すると、鎧は膝から崩れた。

鎧が膝から崩れると、兜や関節から炎のようなものが噴き出していった。

「………一体、お前は何者なんだ?」

それに応える様に、鎧は炎に包まれていき、その正体を露わにしていく――。

(?!)

その正体は、ユンガのよく知る少年の姿だった。

 人差し指を失い、満身創痍の状態の快。

「快君だったのか………しかし、この暴れように、鎧の大きさ……」

 ユンガは、周りを見渡す。

倒壊したビルに、荒野同然の露呈した大地。

目の前の全てには、復興を許さない程の破壊の跡が残っていた。

(知らぬが仏か、はたまた………いや、これ以上詮索しない方が吉、か?)

ユンガは快を寝かせ、立ち上がる。

すると、どこからか拍手が聞こえてきた。

「悪くない、悪くなかった。酒の肴には持ってこいの余興だったぞ」

「何者だ―――ッッ!?」

ユンガが声と共に拍手の響く方を向くと、”鎧”を認識した時と同じ感覚が全身を伝った。

目の前に現れたのは――

銀の長髪をなびかせ、碧色の瞳を妖しく輝かせる、人ならざる者だった。

その者は、腕を組み、静かな笑みをたたえていた。

「どうした? 青ざめているぞ小童。もう少し余裕を持ってみてはどうかな」

 漂うは、一触即発の威圧感。

ユンガは、屈することなく睨みつつ、直感で理解した。

”こいつこそが、追い求めていた銀髪の怪物”ということを。

 「貴様…………貴様がこの世界の境界を壊したのか!!」

ユンガが髪を逆立て、爪をとがらせ怒鳴り声をあげると怪物は嗤った。

「実に軽率なものだな、魔族の知能とてそんなものか………だとすれば仕方あるまいか」

「質問になってないぞ…………僕は、上から物を言うタチには昔っからちょっとばかし手加減できなくてな」

睨み続けながら、両腕に稲妻を纏うユンガ。

対して、怪物は鼻で笑いながら片目を瞑り、手を突き出した。

「五分。五分だけ貴様の力を見てやろう、ワシは観察が好きでな」

怪物が発言した瞬間、ユンガは全魔力を体から放出させる。

「それがお前の遺言だな、慈悲はいらないらしい」

ユンガは怪物から離れ、地面を蹴り浮遊して詠唱を始めた。

「”――我が歩み、普遍でなく。我が脳髄、不変にて。我が前に驕る者、頭を垂れん」

一言目を聞いてなお、怪物は腕を組む姿勢を崩さず、ただ笑っている。

「しかして我は王でなく、されど我が血は高貴なり。故に驕れる者、我が血を冒涜せんとする者は我が剣で以て、汝の体に我が王の言の葉を刻もう”」

怪物は、ユンガを見上げた後、両目を瞑り人差し指をくいくいと曲げた。

「さ、何か来るんだろう? さっさと出さんか」

「跪け、頭が高いぞ雑種ども」

漆黒の壁は、シトリーとの戦での比ではない程に展開され、もはや地平線を埋め尽くし、空すら覆いつくしていた。

そこから放たれる、無数の衝撃波は怪物の体へ集約していく。

「肉片すら残さず、僕の前から消えろ」

そして、怪物は衝撃波へ吞まれて、爆発していった。

ユンガが下を見下ろすと、そこには何も残っておらず。

周囲と上空を見渡すが、どこにも姿は無い。

「………自信に対して、実力が伴っていなかった様子。魔界にはそんな奴は居なかったぞ」

ゆっくりと、地面に降りると――。

「そうだな、坊主を含めて」

怪物の声が、どこからか聞こえてきた。

「僕の魔術は回避不能では…………?」

一気に、ユンガの額から汗が噴き出る。

 慌てて横、縦に首を振り、周りを確認するがやはり姿は見えない。

(何故声が響く?!)

 思考を巡らせていると、目の前に何事もなかったかのように怪物が立っていた。

それを見て、ユンガは悪寒を背筋に走らせる。

「回避不能にして最強の攻撃魔術か、悪くない。むしろよくぞここまで昇華させたものだ、誰かさんの真似にしてはな」

「…………なんで、生きている……………?」

怪物はユンガの顎を撫で、笑いながら答えた。

「あぁ、教えてやろうとも。ワシは、不死身だ」

 告げられたのは、実質的な死刑宣告。

ユンガは、目の前の絶望をただ受け止める他に無かった。

だが、それでも。

「不死身…………? 良い事を聞いた」

 ユンガは、笑って魔力の底尽きた体を動かし、体術の構えをとった。

「――思う存分、貴様を懲らしめられるという訳だ」

「ふっ、残り四分と四五秒だ。約束は守ってやる」

余裕を崩さぬ怪物に、ユンガは深く拳を突き。腹部に打撃を与えた。

「そうか、じゃあ質問に答えてもらう」

自然と居り曲がる怪物の体に、ユンガは蹴りを入れる。

「何故、俺の妻を攫った!!」

蹴り飛ばされた怪物の体に、すかさず回り込み荒野の方へと殴り飛ばした。

怪物はただ、サンドバッグの様に攻撃を受け続けている。

「ふむ、時間が経ったら教えてやる。残り約四分で、ワシを納得させてみせろ小童」

落ち着いた物腰で話す怪物に、ユンガはこれまでにない程の連撃を与え続けた。

平手打ち、爪による斬撃、刺突、鉄槌打ち、回し蹴り………………

ユンガがあらゆる手を出していく毎に、体が歪んでは元通りの形状を成す怪物。

「はぁ、はぁ、…………倒れろ、倒れろ倒れろ倒れろ倒れろ倒れろ!!」

拳の連打すら、怪物は体で受け続けて笑っていた。

「これぐらいしか能がないのか、誰に教わったその体術。魔王の器の誰かではあろうが、な」

首を捻ろうとも、飛ばそうとも、八つ裂きにしようとも全く元通りに再生する怪物に、ユンガはとうとう息を切らしていた。

「ぐっ…………全力なのに……………全力なのに何故!」

両腕の爪を交差させ、怪物の体を×印に刻み、少量回復した魔力を使い、ユンガは紫電の稲妻をその印へ放つ。

しかし、みるみるうちに怪物の傷は塞がっていく。

「………まだまだ楽しませてくれるんだろうな?」

嘲笑う怪物に、ユンガは拳を握る。

「はぁ、はぁ……応、楽しませてやる、貴様が降参するまでな」

空に夜の帳が降り、深まるまで、ユンガは拳と魔術を放ちつづけた。

ユンガの爪が、怪物の頭部を三枚おろしにした時、やっと怪物は言葉を交わした。

「………五分と言ったが、結局一時間も付き合ってしもうたわ、長く生きると時間の感覚が早くていかんな」

「……なんだと?」

ユンガがふと周りを見ると、周りの風景は暗く、全て変わっており、夢中で攻撃を当て続けている内に、都市部から遥か遠くへ移動している事を意味していた。

「では………行くぞ。お前の問いに、全てこの攻撃で以て、解答を送ってやる」

刹那、怪物の瞳が妖しく光ったかと思えば――ユンガの下顎が吹き飛んでいった。

「がはっ!?」

ユンガの目からは、怪物が何をしたかすら理解できずにいた。

 ただ、目の前で腕を組んでいるようにしか、見えずにいた。

「まず、一つ目だ。一つ目。この世界の境界を壊したのはワシなのか、だっけか」

 怪物がユンガの目の前から一瞬消えると、眼前に再び姿を現し、ユンガの首を掴んだ。

「確かに、直接的な原因はそうだ。だが、五割程度違う。全てがワシという訳じゃあない。もし、仮にそうだとしてワシに利点が無い」

ユンガの首を掴む手は、次第に握力を強めていく。

「全く、不愉快極まりない、ワシはその件のせいで世界中の生物から魔力、生命力を吸収しなくてはならなくなったんだからな」

「……小童にはわかるまいて、この苦労。しかも、こそこそとしなくちゃ失敗するときた。楽しみも生まれるはずないだろう」

ユンガは、手を爪で切断し、やっと拘束から離れた。

「なるほど、だから子供達を狙っていたというわけだ…………」

煙を上げ、治った下顎を撫でながら睨むユンガ。

「ふっ、まぁ………美味そうな輩には”印”をつけてやったわけだが」

「生命力、魔力共に現代を生きる者より優れた者達に印を付け、成熟する一歩前の段階に自動的に我が魂へと吸収されるように、な」

舌なめずりをする怪物に、ユンガは奮えた。

「………その為に快や他の子供達を殺そうってのか!!」

「そうだ、甘美な果実は、熟れきる前に収穫するのがポリシーでな」

「小童とて、仔牛のステーキは食うだろう?」

そう答える怪物に、ユンガは全力で一撃を加えようとする。

だが、腕はすぐに受け止められ、一八〇度に曲げられた後もぎ取られていった。

「ぐっ、ぐあああ!!」

「手を貸そうか?」

嗤う怪物に、ユンガは残った腕で顔を掴もうとするが今度は瞬時に方腕を蹴り飛ばされた。

「打つ手無し、王手だ小童」

「………もう二つ目…………ええと、なんだったか。そう、”妻を攫った理由”だったっけ」

「これについては、単純な理由だ」

ユンガの髪を掴み、怪物は言った。

「気に食わぬからだ」

「何が気に食わない! 貴様には関係ないはずだろう!」

ユンガが勢いよく言うと、怪物は指を振りながら答える。

「ちっちっち、大いに関係がある。非常に、とてつもなく。なんなら小童の方が部外者だ」

「攫って、何をした!」

「……………殺したよ。確実に、この手で」

怪物は、高らかに笑う。

ユンガは、全身に魔力を込め、体を再生させ怪物の腹を貫いた。

「許さないぞ貴様、例えこの身地獄へ堕ちようと、例え全てを省みる事になったとしても、貴様だけは必ず後悔させてやる」

ユンガは激しく、紅の瞳を燃やした。

「させてくれるのか、楽しみだなぁ? 何不自由なく育ったであろうお坊ちゃんが、このワシをねぇ?」

「…………もはや、言葉は要らないな」

ユンガは、捨て身に近い必死の打撃を怪物に与える。

怪物は腕を組んだまま避け、ユンガの腹に蹴りを入れた。

蹴りを入れられたユンガは、そのまま地面へ叩きつけられる。

「ぐっがはあっ……………」

冷ややかに、怪物は浮遊したままユンガを見下ろしていた。

「………さて、もう終わりだ。楽しかったぞ」

怪物は、手を上げる。

すると、空から光の柱が現れた。

「軽く、魔術を使って終わらせてやる。――我が名を冥土の土産に刻むが良い」

「ジェネルズ。精々覚えておけ」

ジェネルズが指を鳴らした瞬間、光の柱はユンガに降り注ぐ。

ユンガは、光の柱に貫かれながらも、血を吐き吠えた。

「冥界で、待ってるぞ………再び会う時には、俺は貴様の死神となっている事だろうな、忘れてくれるなよ化け物―――――――」

「―――悪魔は、絶対に怨念を忘れないとな」

「ふっ、かっこいいじゃあないか。では消えろ、一気に興味が無くなった」

ジェネルズは、光の柱に囲まれ、笑みながら吐き捨てる。

ユンガは、全身に噴き出る血を抑えようともがき、挙句――静かに目を瞑った。

(…………不出来な夫を許してくださいね。……………姉様も、このユンガ、愚弟極まってしまいました。できる事なら、僕はまたかつてのように―――)

 ユンガが死を覚悟したその時、頭の中にかすかな、聞き覚えのある声が響く。

声が響いた後、魔法陣がユンガの背後に現れ、中に吸い込まれていった。

「…………とどめを刺し損なったか、これで二度目。 やはり力が完全でないようだな」

 ジェネルズは魔術を解除すると、自らの手を見て、握っては開き動かした。

「……やれやれ、魔族とはしぶといものよな。殺したと言っておけば、多少はあやつの真骨頂が見られると思ったが……………」

「………攫っておいて、逃がすとはなんたる無様だ」

ジェネルズは地面に降り立ち、嘆くような言葉を連続する。

しかし、ジェネルズの顔には、その内容とは明らかに相反した笑みが浮かんでいた―――。

~黒幕紹介~

(画像 不明)

ジェネルズ 物理力 ? 肉体 ?  知識 ? 知恵 ? 魔力 ? 再生力 ?

身長 一八六cm

体重 七一kg

正体 ソロムに酷似した、銀髪の怪物。

再生力が非常に高い以外は、脅威度・総合脅威度共に現段階では不詳だが、バエル以上の総合脅威度である総合脅威度 A三のユンガを圧倒するだけの脅威度を備えている。

力が不完全と言っているようだが……………?

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