「手榴弾を放て!」
「だめです! 既に切れています!」
Fencer隊員の叫びと、キマイラの咆哮は基地を引き裂く。
基地にあった筈の先程までの静寂は、一瞬の来訪者を許したと共に裏切られていく。
Fencer隊員の列に紛れ、棕はカードを握ろうとするが――。
「キシャアアア!!」
キマイラの吐き出した、流水によってFencer隊員もろとも流し飛ばされた。
キマイラが出口へ向かおうとした時だった。
「待て!! キマイラ!!」
追いかけていた快が、キマイラの蛇の尻尾を、強くつかんだのは。
出口へと飛び出さんとしていたその身は、四肢を止められ地面に強く打ち付けられた。
すると快の声に、答えるようにキマイラは顔を快に向ける。
「お前、我らの言葉が解るのか!? 離せ!」
「言葉が解る? それってどういう事だ?」
快がキマイラの尻尾を掴むと同時に、暴れる背中を床に押さえつけていると、Fencer隊員が周囲を取り囲んだ。
「よくやってくれた! さぁ、拘束しろ!」
Fencer隊員の一人が声をあげる。
快は、周囲のどよめく様を見てただ、キマイラの体を押さえつける他になかった。
「殺してくれれば、まだ救いようがあったものを……我の言葉が解るなら、その手を離せ人間!! 貴様も一体何が目的だ!」
快は全力で、床のタイルをめくりあげる爪を躱し、口から漏れ出る炎を避ける。
歯を食いしばると共に、後ろへ仰け反り煙を吹き上げる足に力を入れて。
その瞬間――――紫電と漆黒が、交差した。
「キマイラ!!」
「止まれ」
快とキマイラの正面に、突如現れたそれらの交わり放つ衝撃によって、キマイラと快は吹き飛ばされる。
キマイラの体と、快の体が壁に激突すると、快は鎧を解除した。
「なんだ…………?」
眼を開くと、そこには――グリードとユンガの姿があった。
「そこを退け!!」
「すまないが、我が妻に手を出しそうだったのでな」
人外との接触は、混乱を招き人間を置いていく――。
コメント