二十七話 紫電と漆黒


「手榴弾を放て!」

「だめです! 既に切れています!」

 Fencer隊員の叫びと、キマイラの咆哮は基地を引き裂く。

基地にあった筈の先程までの静寂は、一瞬の来訪者を許したと共に裏切られていく。

 Fencer隊員の列に紛れ、棕はカードを握ろうとするが――。

「キシャアアア!!」

キマイラの吐き出した、流水によってFencer隊員もろとも流し飛ばされた。

 キマイラが出口へ向かおうとした時だった。

「待て!! キマイラ!!」

追いかけていた快が、キマイラの蛇の尻尾を、強くつかんだのは。

 出口へと飛び出さんとしていたその身は、四肢を止められ地面に強く打ち付けられた。

すると快の声に、答えるようにキマイラは顔を快に向ける。

「お前、我らの言葉が解るのか!? 離せ!」

「言葉が解る? それってどういう事だ?」

快がキマイラの尻尾を掴むと同時に、暴れる背中を床に押さえつけていると、Fencer隊員が周囲を取り囲んだ。

「よくやってくれた! さぁ、拘束しろ!」

 Fencer隊員の一人が声をあげる。

 快は、周囲のどよめく様を見てただ、キマイラの体を押さえつける他になかった。

「殺してくれれば、まだ救いようがあったものを……我の言葉が解るなら、その手を離せ人間!! 貴様も一体何が目的だ!」

快は全力で、床のタイルをめくりあげる爪を躱し、口から漏れ出る炎を避ける。

歯を食いしばると共に、後ろへ仰け反り煙を吹き上げる足に力を入れて。

その瞬間――――紫電と漆黒が、交差した。

「キマイラ!!」

「止まれ」

 快とキマイラの正面に、突如現れたそれらの交わり放つ衝撃によって、キマイラと快は吹き飛ばされる。

キマイラの体と、快の体が壁に激突すると、快は鎧を解除した。

「なんだ…………?」

眼を開くと、そこには――グリードとユンガの姿があった。

「そこを退け!!」

「すまないが、我が妻に手を出しそうだったのでな」

人外との接触は、混乱を招き人間を置いていく――。

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